今回は溶接や接着剤です。「液体が何らかの形で固体となることで複数部品を繋ぎ合わせる加工」というとより抽象的でしょうか。溶接、接着剤共に種類が膨大なので、それぞれ1.母材を溶融するもの、2.添加材が凝着することで母材を橋渡しするものに大別していきます。
溶接
溶接とは複数の部材を熱を加えることで溶かし接合することです。
1.はよく見る溶接ではないでしょうか。アーク溶接などがこれに当てはまります。全長1000 mm超えの鉄系やアルミの製品では必ず用いられていると考えてもいいですね。一見現代の「鉄アルミ社会」においては万能に思われますが一つ注意点が。それは一定の確率で欠陥が生じます。この欠陥を防ぐ方法は確立されていません。そのため、巨大なものほど欠陥がたくさんあることになります。本四連絡橋では建造時よりこの欠陥部を常にモニタリングしており、異常があればすぐに処置を行う用意ができています。他の製品ではどうなんでしょうかね?ある程度のものなら安全率を十分に取ってから放置のような気はしますが。なお、熱源に関しては電気、ガスが主で、まれに摩擦熱が使われます。
2.はよく見る、というよりは経験したことがある人が多いようなイメージです。電子工作でのはんだ付け、やったことがある人多いのではないでしょうか。基本的には融点の低い金属を溶かし母材につけた後、常温で凝固させて接着します。基本的に低強度なので大荷重がかかる場所には適用されません。ろう付けやはんだ付けがこれに当てはまります。しかし、母材を溶かすことなく取り付けが可能で、なおかつ、ろうの融点は母材の融点よりも十分に低いことがほとんどなので、精度が要求される場合や母材の過熱が許されない場合には非常に有用です。なお、熱源については1とほぼ同じです。
で、じつは溶接にはもう一種類あり、それが溶解した部材を接合部に流しこむが母材と同じ材料が融解することで結合する方法です。その名もテルミット法。本来は純粋な金属を取り出すための精錬法の1つですが、溶接にも使われます。理科の教科書にも載っている有名な酸化還元反応ですね。原理等はここでは触れません。この方法の優れたところは熱源が必要ない…というと語弊がありますが、溶接部においては熱源は一切必要ありません。また、酸化還元反応を伴う溶接というと別のうまみがありまして、それが新旧の鋼材を溶接できるという点です。この特長、ロングレールの敷設及び交換において大変便利。近年は定尺レールを溶接でつなげ、長いものだと全長30kmを超えるロングレールが主流なのですが、もちろんいちいちすべてを交換するのは不可能。そのため適当なところで切って交換したい部分のみを交換、再度もとからあったレールに溶接することで保守を行います。で、そのときに新旧の鋼材をつなぐ必要があるのでこれが便利。近年はガス圧接でも可能になってきたためこの特長は活きにくくなってきましたが、それでも大規模な設備が必要ないこと、品質が安定していることなどを理由に現在でも多く使用されています。
ここからは溶接の雑談にはなりますが、個人的には溶接部の組織が気になります。絶対に不均一できれいとは言い難い組織だとは思うのですが…しかし溶接後に水で急冷させている事例を直接見たので何ともいえないんですよねぇ。先日東北新幹線では架線の張力調整装置の部品が破断し、運行に支障をきたしました。問題の部品なのですが溶接部付近で破断しているんですよね。断面積が急激に変化したことによるものなのか、応力集中なのか、はたまた通常の引張試験時の破壊と同様にある程度ランダムなものなのか、それとも溶接の際の熱によってやはり組織になんらかの影響があるのかは分かりませんが実際どういった破壊メカニズムなのかは気になるところです。
接着剤
接着剤とは複数部材をつなぐために用いられる物質です。そのほとんどが常温環境下で液体、またはゼリー状で空気中の水蒸気や硬化剤と反応して常温環境下で硬化します。紫外線や高温環境下で硬化するものもあり、使用用途に合わせた硬化反応を用意できるのは強みの一つです。
1.は1液性接着剤がほとんどだと思われます。あくまで傾向ですが。液体タイプの瞬間接着剤などがこれに当てはまります。その多くが空気中の水分や紫外線など、環境が因子となり硬化します。
2.は2液性接着剤、すなわち主剤と硬化剤をセットで使うものが多いです。エポキシ樹脂、アクリル樹脂などがこれに当てはまります。硬化剤がないと接着剤としては機能しないので主剤と硬化剤の分量はめっちゃ大事。硬化剤がないと硬化しないということは保管が多少雑でもいい!なんてことはないので説明書通りに保管してください。普通に劣化します。
さて、ここまではいいとしてなぜ接着剤はくっつくのでしょうか。次回やります。
完全に余談ですが接着剤を使う際は裏の注意書きを読み、必ず遵守しましょう。そのときは大丈夫でも後々アレルギー反応を起こすなど何らかの後遺症が残る可能性が高いです。そこのものづくり系サークルに入っている君、聞こえてるか?中の人はエポキシを素手で扱い続け、幸いにも何事もありませんでしたがこんな馬鹿な真似はしないように。
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