今回は前回名前のみ紹介した各合金の詳細説明その①です。詳細とはいえステンとハイテン以外さらっとしか触れませんが悪しからず。
- ステンレス
おそらく最も身近な特殊鋼。FeにCrが10.5%以上、Cが1.2%以下含有されているものをステンレスと呼びます。マルテンサイト系、オーステナイト系、フェライト系の3種類に大別することができ、加工方法や用途によって使い分けられます。加工方法については、オーステナイト系は張出し成形、フェライト系は深絞り成形に用いられることが多いそうです。加工については鉄系がひと段落したらやります。
物性は、鋼と比較した際、
・錆びにくい(腐食しにくい)
・熱伝導率が低い
・熱膨張率が高い
・塩化物イオンには弱い
・磁性はステンレスの種類により異なる
そもそもステンレスとはstain-less steel、すなわちさびにくい鉄という意味。さびない仕組みとしては、まずステンレスに含まれるクロムが空気中の酸素と結合します。そうすると、表面がクロムが錆びたものによりコーティングされ、中の金属が守られるというものです。この表面の錆びた部分を酸化被膜といいます。表面にあえて錆びを作ることで中の金属を保護する場合は必ず出てくる重要な語です。炭素鋼でも黒錆びを発生させて同様の効果を狙うこともあります。銃が黒いのはこれによるものです(現在は塗装)。
しかし、このクロムの酸化被膜には弱点があります。それが塩化物イオンに弱いということ。塩化物イオンは塩素がイオン化したもので反応性に富むという性質があります。だいたいの金属は反応してしまうと考えて良く、ステンレスも例外ではないと。そして厄介なのが人類社会において水回りにはほとんどの場合塩化物イオンが存在するということです。水道水には微量ですが塩素が入っていますし、プールや海水は塩化物イオンまみれですよね。(海水は塩素が溶けているのではなく、NaCl、即ち塩の存在によるもの)ちなみに近年では塩化物イオンでも腐食しないステンレスが開発されていたりもするので全てのステンレスが塩化物イオンに弱いわけではありません。
用途は多岐にわたりますが、やはりさびないことを生かしている製品が多いです。キッチンをはじめとした水回りの製品はもちろんのこと、配管の一部でもあります。塗装されず、金属光沢を放っている製品はすべてステンレスといっても過言ではないでしょう。以下は個人的に興味のある分野でのステンレスの用途です。詳細は今後各分野で触れていこうと思います。
・鉄道車両の構体(乗客が乗っている箱)
・腕時計のケース
・羽田空港基礎部(滑走路延長部)
・火力発電所の配管
余談ですが、ステンレスボルトを使用するときには注意点があって、それは焼き付きやすいということ。物性で紹介のあった熱伝導率と熱膨張の関係で、高速でねじ締めをすると摩擦熱によってボルトとナットの山が膨張し固着するのだとか。因みに一度焼き付くとそこから動かすのは不可能になるのでお気を付けて。対策としては十分にゆっくり締める、オイルやグリスを十分に塗布するなどがあります。
長くなったので今回はここまで。次回は…ハイテンかな?
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