11 加工-5

加工

 今回は研削。平たく言えば砥石でごりごり削るあれです。包丁研ぐのも研削ないし研磨ですね。まあもう少し細かく言うと、無数の砥粒を用いて工作物を削り取って加工するものです。切削は刃物を使って加工するのでそこが違います。

 研削は前回出てきた母性原理を覆すことのできる加工方法になります。理由として研削加工は運動転写加工かつ、完全にあてはまるわけではないものの、圧力転写加工でもあるからです。なぜ圧力転写は機械精度を上回る精度を出せるのかという話は一度切削の基本原理と3次元切削(通常行われる切削)についてある程度理解しなければいけないので今回はやりません。

まずは切削との違いについて具体的に見ていきましょう。

 

切れ刃が非常に多い

 切削加工では加工物と接する切れ刃の数は多くても4つですが、研削では砥粒が無数に加工物と接しています。

 

切れ刃の形状および配置が不規則

 これに疑問を持った方は紙やすりの表面をぜひ見てください。

 

すくい角が負

 すくい角は切削の回で説明するのでこれに関してはおいおい理解していただければ結構です。

 

自生作用

 研削加工では刃先が鈍化すると砥粒(刃)に作用する力が増大して砥粒を破砕または脱落させることで新しい切れ刃が生成し、切れ味を自ら再生させます。そのため、研削条件を正しく設定すると良好な切れ味が継続します。包丁(切削)は「一度切れ味が落ちても使い続けていれば勝手に切れ味が戻っている」なんてことありませんよね。しかし研削加工ではそれが起こるんです。すごいでしょ?

 

砥石

 続いては砥石の構成要素と規格について。砥石は3要素5因子で構成されます。3要素砥粒結合剤気孔で、5因子砥粒粒度結合剤結合度組織です。砥粒は砥粒の材料、粒度は砥粒の大きさ、結合剤は砥粒を支持、固定している材料の種類、結合度は結合剤の強度、組織は単位体積当たりの砥石の割合です。そして規格もこの5因子がそのまま反映されています。「WA700M5V」という砥石があるとすると、WAが砥粒、700が粒度、Mが結合度、5が組織、Vが結合剤です。それぞれの内容については規格表とにらめっこしてください。

 なお、自生作用の説明において、適切な研削条件についての言及がありましたが、判別方法は仕上げ面や砥石の状態です。これらは目こぼれ形(Ⅰ型)、正常形(Ⅱ型)、目詰まり形(Ⅲ型)、目つぶれ形(Ⅳ型)の四種に大別され、これによって判別します。経験則として結合度と粒度、切込み量である程度予測はできるため、これをもとに初めから正常な状態を目指します。ちなみに、経験則といっても職人によるものではないですからね。実験によって導き出されたもので、数式をもとに導かれたものではないということです。

 研削についてはこのあたりで…。ボリュームが少ないのは私自身理解しきれていないのと早く切削に行きたいからです。次回は鋳造です。お楽しみに!

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