今回は特殊加工~なんですが、その前に接着剤の仕組みを少しだけ触れます。
接着剤の仕組み
さて、前回接着剤の仕組みについて触れませんでしたが皆さんはどういった仕組みでくっついていると思いますか。答えは3つ。
- 機械的結合
まずは機械的結合です。液体が母材にしみこみ、固形化することで結合される、つまり紙等の繊維や材料の凹凸の間に接着剤が入り込み、アンカーを打ったように固定されるものです。
- 化学的結合
次に化学的結合です。共有電子の存在による結合ですね。
- 物理的結合
そして最後は物理的結合です。これは分子間力やファンデルワールス力によるもの。これらは電磁気学的なものと万有引力によるものの主に二つです。電磁気学的なものは水素結合が有名ですが簡単に言えば一部の分子には電気的な偏りがあり、これが磁石のようにプラスとマイナスで引き合うというものです。水の沸点が高いのもこれによるものです。極性分子によって構成される物質なら強弱はあるにせよすべての物質に働きます。もう一つの万有引力は簡単で、「質量をもつものは互いにひかれあう」というあの有名な原理です。式(1)に示すように2物体の質量の積を2物体の距離の2乗で除したものなので、距離が近く重い物体同士であるほど大きな力が働きます。
\(F=G\frac{Mm}{r^2}\) (1)
こんな力微々たるものじゃないの?と思った方もいるかもしれません。が、接着剤って液体ですよね。つまり物体の表面に完璧に入り込みます。みかけの表面積ではなく真実接触面積で接することができるため接着剤と部材が接する面積はみかけのそれよりも2~5倍は増えると考えても問題ありません。しかもr項は2乗なので極端に小さくなることもわかります。よって、この時の力の大きさは案外馬鹿にできないものになるのです。
真実接触面積とみかけの接触面積もまたいつかやりますか…
特殊加工
さて、ここから特殊加工について軽く紹介していきます。
まず特殊加工の特殊とは、主要な製造方法ではないという意味の特殊であることが多いです。ということで、それぞれの加工ではなぜその加工が主流になり得ないかという話の方が重点的になると思います。
レーザー加工
鳥人間関係者ならなじみ深いであろうレーザー加工。レーザーによって加工物を液体ないし気体にして除去し、これによって切断します。2次元の切断や刻印等の焼き入れにしか使えませんが非常に高速で高精度です。これが主流になり得ない理由は実際に使ってみるとわかりますが、まず加工物が薄い板材でないと無理です。金属を加工可能なものもありますが…使用エネルギーが大きすぎます。そしてこの使用エネルギーが大きいという点も大きなデメリットです。なにせ原子を励起させないと切れないので。また、レーザー照射部分は高温になるため有機物を加工する際は火災リスクが付きまといますし、樹脂を加工する際は有害物質が出る可能性もあります。ワークスペース換気フィルターも安くないですし、レーザーの焦点精度が狂うと本来のパワーを発揮できないため日常メンテナンスも結構手間(とはいえ近年はこの問題はほぼ解決)。
3Dプリンター
近年は低価格帯のものや超高精度のもの、金属を加工可能なものまで登場し近未来の加工技術として爆発的に広まった加工です。3Dプリントする方法は何種類か存在していますが、基本は2次元のデータを積み重ねていくことで造形します。積分っぽいと思ったのは私だけではないはず。全くといっていいほど知らないのでこの程度にしておきます。これが主流になり得ない理由は何と言っても使用可能な材料の制約と製作時間です。
放電加工
絶縁体の液体の中に電極(工具)と加工物を入れ、スパーク放電によって材料を蒸発させる加工です。具体的には工具を陰極、加工物を陽極として両者を近づけるとスパーク放電を起こします。このとき放電部分は約5000 ℃にも達するため加工物の溶融と蒸発が起こります。これと同時にスパークによる絶縁油の気化や急激な体積膨張による高圧、衝撃力が発生し、この衝撃力で溶融・蒸発した材料を除去し、さらに型を振動させること(振動数小)で絶縁油を攪拌して材料の除去を手伝います。
放電加工には大きく分けて2種類あり、一つは陰極をワイヤにし、レーザーカットのように2次元加工を行うもの、もう一つは型を陰極とするものです。後者は鋳造のように直接転写する形になります。なお、放電により加工物表面が若干硬化します。製作精度等は十分にあり、金型には使われる技術になります。また、導電性の材料ならば切削の難しい硬質材料も容易に加工できる点もメリットです。これが主流になり得ない理由は材料の制約と原理的に大量生産には向かないことが挙げられます。余談ですが、某鳥人間サークルの作業場には「放電加工卍」と書かれた金属ブロックがあるとかないとか。
電子ビーム加工
電子をビーム状に飛ばすよ!それ以上はちょっと理解できませんでした。真空空間で加工することは分かるのですが、電子ビームって何?で止まっています。β線とは違うんですよね??
さて、ここまででおおよそ共通して言えることとして、エネルギー効率が悪いということがあります。実際どの程度の効率なのかは下図に示される通りです。元となった図は権利上厳しいので概略を抽出して載せます。
どうでしょうか。フライス加工(切削加工)がいかに単位エネルギー当たりの加工速度が大きいかがよくわかりますし、実際に切削や塑性が主な加工技術として使われるのは納得ですよね。それでは次回、大量生産を実現した塑性加工についてです。
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