今回から発条です。初回はばねの基礎を一通り触れましょう。
そもそもばねとは材料の弾性変形を利用したものです。弾性変形とは力を除くと、完全に元の状態に戻る変形のことです。元の状態に戻らない変形は塑性変形です。弾性変形は式(1)に示される通りで、この式をフックの法則といいます。高校の物理基礎でも出てきますよね。
\(F=-kx\) (1)
Fは外力、kはばね定数、xは変位量です。マイナスをつけているのは向きの関係ですね。要するに、材料は弾性変形領域内では変形させればさせるほど変形に必要な力の大きさ(≒反発力)は大きくなるということです。ゴム以外のばねは変位量がマイナス方向でもこの式が成立します。この時にため込むエネルギー(弾性エネルギー)は、式(2)であらわされます。
\(U=\frac{1}{2}kx^2\) (2)
ばねの種類はたくさんありますが、弾性変形領域内で変形させているものであればすべてこの式を使うことができます。なお、この特性は厳密には等方性材料なので木材やFRP等の異方性材料はあてはまらないので要注意。ちなみに異方性というのは向きが変わると特性の変わる材料のことです。
今回は少し歴史も触れていきます。人類史において火や石器と同じく重要な役割を果たしたのがばねです。最も古いものは弓だと思われます。そこから時代が下りエジプト文明、中国文明では馬車が発達し、それに伴って金属や革、木を使用したばねが使用されていきました。その後もからくり、時計など文化芸術の場面でも多用されるようになっていきます。そしてばねにとってもまさに革命となったのが産業革命。鉄鋼材料の大量生産が実現し、蒸気船、鉄道を利用した高速移動も求められるようになったことでばねの需要は劇的に増加します。急速な機械化や高速化、さらには軍事的な側面も相まって1800年代後半から急速な進化を遂げます。そしてなによりWW2はそのことを残酷に各国に思い知らせることになります。兵器や戦史に詳しい方はご存じでしょうがばね、ゴムも戦争を大きく動かす一因だったのです。戦争は終わっても機械化の波はとどまるところを知らず、今やばねが使われていない機械を探す方が難しいと言えるでしょう。
さて、そんなばねの基本種類は以下の6種です。
・コイルばね
・板ばね
・トーションバー
・たけのこばね
・皿ばね
・渦巻きばね
これらを次回一つずつ見ていきましょう。
また、少々変わり種として、
・空気ばね
・磁気ばね
・ゴム
が存在します。これらは別枠で次回以降にやります。それではまた次回をお楽しみに。
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