今回はねじ、特に木ねじです。ねじは英語でスクリュー。プロペラのことをスクリューということがあるのはねじれているもの全般を指すからなのだそうで。
歴史
ねじの起源はよくわかっていませんがアルキメデスの生きていた時代の前後に生まれたと考えられているようです。ただし、日本人が初めてねじに触れ、生産するきっかけというのは記録に残っています。それはマスケット銃、いわゆる火縄銃ってやつです。マスケット銃の銃身と薬室は筒と尾栓からなる構造で、火薬燃焼時の圧力に耐えるため、またガス漏れを起こさないためにねじを切っています。欧州では既にタップを利用したねじ切りが主流だったため、ある程度安定した品質のものを大量に生産することができていました。一方日本にはそんな便利な工具は存在せず、一つ一つがやすりなどによる職人の手作りだったと言います。
その後も日本では鉄砲鍛冶が中心となり鉄砲をはじめとしたさまざまな金属製品(主に舶来品)用のねじが生産されていたようです。今でも大阪、堺ではねじ生産が盛んですよね。その後1920年頃から木ねじの大量生産、普及が進みました。
もっと歴史について知りたい!という方は以下の動画を視聴することをお勧めします。非常にわかりやすいです。
仕組み
木ねじに関しての原理は見たままで、螺旋が木に食い込むことで軸方向に抜けなくなります。さらにいえば、表面積が大きいため、木材との間に大きな摩擦力が発生し、これによる抜けにくさというのもあります。…ここで摩擦力の定義を思い出してみましょう。垂直抗力と摩擦係数の積でしたね?ここでいう「垂直抗力」とは何が該当すると思います?
答えは木材の元に戻ろうとする力です。ねじを打つと木材を圧縮しながら進むことになります。そのため、元の体積に戻ろうとするのですがこれによりねじが締め付けられるということです。しかし、この圧縮できる量は限りがあるので木にそのまま打ち込むと繊維に沿って割れてしまいます。そのため予めねじ径より一回り小さい下穴を開けておくことで本来の力を発揮できるようにします。
メリットとデメリット
釘や楔などと比較した時の木ねじの利点は何と言っても施工の容易さと安定した品質の製品を製造可能なことでしょう。プラスドライバーかマイナスドライバー、最悪硬貨があればねじを回すことは可能ですし、しっかりと木に食い込ませることで抜けることもありません。トルク管理も必要なく焼き付きの心配もない、板厚の自由度も高く非常に優れています。
しかし欠点もあり、施工の時間がかかることや複数回の脱着には向いていないことが挙げられます。木ねじを打つ際は、適切な下穴を開けたうえでねじを軸力を加えながら回す必要があります。釘なら下穴が必要な場合もありますが釘打機を使用すれば1本1秒以下で打つことができるので大量に打つ必要がある場合はあまり向いていないと言えるでしょう。また、木材を相手にしている以上一度あけた穴に再度同じねじを打っても十分な拘束力は得られません。
注意
一応注意点として、木ねじとタッピングビスは別物ですからね。木ねじは木材を相手にすることを想定されているので焼き入れ処理などは最小限です。一方タッピングは金属や樹脂用のものなので十分な熱処理が施されています。間違っても金属や樹脂相手に木ねじを使わないようにしましょう。
頭
ねじの頭にはいくつか種類があります。代表的なものをいくつかピックアップし、紹介していきます。
皿頭
主にドライバーを使用し締結される場合に用いられます。沈頭鋲と同じく、正しく施工すれば表面からねじが飛び出て見えないのが良いところです。マイナスねじは汚れやすい箇所や屋外、プラスねじは施工の容易さからそれ以外の場所において万能ねじとして使用されています。
なべ、トラス、バインド
こちらはタッピングでよく使われる形状です。皿型と違い、表面に頭は飛び出てしまうものの、組付ける部材を傷めない、余計な加工が必要ないなどのメリットもあります。こちらもプラス、マイナスそれぞれ溝を切ってあります。
六角、四角
こちらは主にボルトで使われるもの。ねじ締め時に、スラスト(軸)方向に力を発生させることを想定しない代わりに、大トルクをかけることができます。また、頭の側面に貫通穴を設け、そこにワイヤを通すことで緩み防止を行う事例もあり、金属製品のねじ締めにおいては非常に便利です。
キャップ、丸キャップ、低頭
こちらは六角穴付きボルトです。六角穴付きボルトは省スペースで作業でき、大トルクにも対応できることから様々な場面で用いられています。キャップと呼ばれるのが標準、丸になるとなべねじのようにドーム状の頭になり、低頭は読んで字のごとく非常に頭が薄いタイプです。
まとめ
今回は少々内容が軽かったもののこの辺で。次回はボルトです。こちらも文章の量自体は軽めですが内容はしっかりとしているのでお楽しみに!
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