4.1 連結器-2 自動連結器

鉄道

今回は自動連結器、密着式自動連結器、密着連結器の解説です。

自動連結器

 構造面や仕組みについては以下の動画を見ていただいた方がわかりよいと思います。以下の動画は並型自動連結器という日本で普及[注1]している自動連結器です。基本構造は欧米で普及している別のタイプの自動連結器ともそこまで大きな違いはありません。互換性はない場合があります。

 手で例えると人差し指がある側、これをナックルといいますがこれが相手側と握手(というか指相撲?)をするようにしっかりと噛み合うことで連結しています。ナックルを固定しているのは解放テコにつながっている錠一本のみ。牽引力は(ナックル)ー(回転ピンと錠)ー(首振りピン)ー(緩衝器)ー(車両)の順に伝わります。なお、連結時ナックルは片方だけ開けていれば十分です。

 ちなみに並型自動連結器1つの重量は約500kgあります。それだけ強度が必要ってことの裏返しなんですけど想像より重いと思った方は多いのではないでしょうか。なお、大陸の自動連結器はより大きく頑丈なものもあるので、もしかしたら主要幹線用としては標準か、もしかすると軽い方かもしれません…

 

密着式自動連結器

 自動連結器の連結面の隙間をなくし、密着するようにしたタイプです。また、自動連結器を手で例えると親指の部分が尖っており、これが相手側とうまくかみ合うように設定されています。この連結器は隙間がなくなっているので電車の乗り心地向上に大いに役に立った形状です。また、密着しておりかつツメのおかげで連結器同士で上下にずれることもないので電気連結器や空気管を併設し連結、解結作業の手間を減らすこともできます。

 普通の自動連結器とも互換性があり、互いに連結が可能になっています。これ、意外と便利でして例えば列車の両先頭部分のみ密着式自動連結器にしておくと、通常の機関車、気動車、電車と種類を問わずに牽引が可能になります。万が一の場合の救援には非常に便利ですし、全般検査等の大規模検査を他社に依存している場合も機関車牽引で工場まで運ばれるのでアダプターや両頭連結器等を用意しなくても大丈夫となります。とはいえ日本は電車王国なので前後の電車や気動車に救援してもらうのが最速にして最適な場合が多く、先頭の連結器も次にご紹介する密着連結器の採用が多くなっています。

天地が逆転している。空気管が連結器左右に存在することや解放テコも確認できる
名鉄300系電車の先頭連結器

 

密着連結器

 電車大国日本では最も普及している形式です。日本では柴田式とその派生型(新幹線車両用のものは形が若干異なる)が主流で、欧州ではドイツ発のシャルフェンベルク式連結器が主流となっています。

 以下は柴田式のものです。新幹線の場合は相手側に差し込む部分が四角柱ではなく円柱になります。柴田式の特徴は部品点数の少なさと解放テコが横に設置されていることです。これにより、電気連結器は上部(東北新幹線車両先頭部など)や下部(ほとんどの在来線車両)に設置されます。空気管設置位置は多くが中央上下、あるいはそのどちらかです。

 なお、連結器突起部の穴は空気管でもなんでもないのでご注意を。

 

 こちらはシャルフェンベルク式のものです。2:18~が一番わかりやすいですね。シャルフェンベルク式の特徴は突起の先端が鈍角であることや、大型の解放テコが下側にあることです。これにより電気連結器設置場所は左右側面と上部のいずれかです。空気管設置位置は柴田式とほぼ同じになっています。欧州の流線形先頭車では連結器カバーを閉じている状態でもこのテコが見えているため空力的な部分が若干心配ですがどうなんでしょうね?

 

遊間と走行性能

 さて、ここまでさらっと密着だとか乗り心地がどうこうと言ってきましたがこれはどういうことか今から解説です。まずは自動連結器についてですが隙間があることは先に述べた通り。ではなぜ隙間が存在するのでしょうか。答えは「動力集中方式、特に貨物列車においてはそうしないとまず走れない」からです。動力集中方式では動力を1台の機関車(両数でカウントするといろいろややこしい)がすべて担います。しかし貨物列車は日本ですら編成重量1000tクラスが平然と運行されていますし、路面も車輪もツルツルの鉄。とてもじゃないけど引き出し時、一度にすべてを動かすなんて不可能なわけです[注2]。この隙間があることで1両ずつ引っ張ることができるということなんですね。なお、蒸気機関車時代など機関車も貨車も性能が低かった時代には圧縮引き出しといって最初に後退し、遊間を最大限活用する引き出し方法も存在しました。

 余談ですが日本国内であれば近年の機関車、貨車双方の技術向上により平地ならば遊間のない状態での発車、いわゆる棒引き出しも行えるようにはなっています。

 実際の例のですが以下の0:49からの場面でガチャガチャいってるのが聞こえると思います。これが各連結器がぶつかっている音です。

 

遊間と乗り心地

 ここからは乗り心地について。つまり「隙間がないことによる乗り心地の向上について」です。まず動力集中方式において隙間があると加減速時に大きな衝撃が加わることは想像に難くないと思います。これは乗り心地が悪そうですよね。次に動力分散方式。これなら動力が各車両に分散していて、制御が同じなら自動連結器でもいいんじゃないのと思われるかもしれません。しかし、動力分散式にも動力車と付随車(動力無し)がいるので機関車列車と同様、付随車にいる人は大きな衝撃を感じることになります。そのため、動力の分散、集中に関わらず密着していた方が乗り心地は良いです。ただし、これとは別に緩衝器性能も乗り心地には影響しているので一概に密着=乗り心地良好とも言えません

 

まとめ

 ということで日本で主要な連結器を紹介してきました。皆さんも連結を見る機会があればぜひ見てみてください。密着連結器の解放テコが動いているのとかは比較的わかりやすいですよ!

 

注1

 普及という言葉を使っていますが現在のJR、当時の鉄道省管轄の国営鉄道が大正14年に行った連結器一斉交換事業の賜物なんですよね。それまでは欧州同様のねじ式連結器だったのですがアメリカからシャロン式、アライアンス式を大量購入し全国一斉に連結器交換を行いました。この結果今の鉄道大国が出来上がったといっても過言ではない事業で、連結作業の効率化や安全化はもちろん、許容牽引力の増大、列車走行中の安全性の増加(連結器が外れる事故の低減)などなど数えきれない功績があります。これを国家事業として行ったのは日本をおいてほかにありませんからその点も非常に素晴らしい。

 

注2

 引き出しというのは静止状態から加速することを指します。要するに発車時ということですね。100km/h以下で比較するならこの時に必要な力が最も大きいので貨物用機関車では性能値の一つとして引き出し牽引力何tというのはよく言われるものです。電車でいう起動加速度的な指標です。なぜ最も力がいるのかというと、静止摩擦が最も大きいからです。車軸ー軸受ー軸箱の(このハイフンにかかる)摩擦力は馬鹿にできませんからね。日本では軸重15t、1軸受あたり7.5tもの荷重がかかっているので…

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