今回はばねの種類第二弾!
板ばね
曲げ方向のみに力を作用させる非常に単純なばねです。おそらく我々が最もなじみ深いのはコンセントの差込口でプラグを挟み込み固定するアレです。弓も板バネと考えることができますが今回はカット。
このばねの特筆すべき点としてばね定数の調整の容易さがあります。ばね定数を2倍にしたければ2枚の板を重ねればいいだけです(実際には異なる)。ばね材の形状も簡単なので適切な熱処理を行うだけでほしいばねが手に入る手軽さ、大重量への対応が容易という点が高く評価され長く使われており、現在もトラックのリアサスペンションは板ばねであることが多いです。また、重ね合わせばねの場合、板と板の間の摩擦により減衰するという特性も付与できます。そのため、ダンパを取り付けずともある程度の乗り心地や車両の振動特性は保証されます。要するにトランポリンのように車体がボヨンボヨンと跳ねずに不必要な衝撃だけをきれいに吸収するということです。ダンパの回で詳しいことはやります。とはいえダンパほどの減衰比はさすがにないためしっかりと減衰性をもたせたい場合はダンパの併用が不可欠です。ちなみに、板ばねにおいて忘れがちだけど非常に重要な装備というのが存在しまして、それがこれです(図1)。シャッカルと呼ばれるもので、これがないと想定された正しい変形ができません。
また、変わり種としては図2に示すような板ばねもあります。(下手だけどある程度察してください)
このばねは3次元の動きに対応しており、曲げだけでなくねじり荷重も受けます。精密機械運搬時の緩衝装置として使われています。なお、免震建築物のアイソレータ(積層ゴムなど)の近くに配置されていることもあるU型鋼材はばねではなく、ダンパなのでお間違えの無いよう。あれは塑性変形します。
トーションバー
車、戦車好きなら絶対に知っているであろうばねです。仕組みとしては「ねじる(torsion)」力のみを利用したもの。コイルバネをそのまま伸ばしたといっても過言ではないと思います。仕組みは単純なのですが、材料の開発が難しく、冶金技術に優れた国でないと量産は困難です。実際、WW2開戦時にこのばねを製造可能な冶金技術を保有していたのは端、独、仏、英、米、ソくらいです。
空間効率は最も良いと個人的には思うばねです。コイルバネはどうしてもコイルの中心部分がデッドスペースになりますがこのばねの見た目はただの棒ですからね。実際、戦車のサスペンションとしては最長クラスの歴史を誇り、採用数もダントツです。また、スペースの限られる車両でも用いられ、トヨタのハイエースやスバル360などに採用されています。
たけのこばね
円錐コイルバネの素線をそのまま軸線方向に拡大したようなばねです。空間容積に対して大きな荷重、吸収エネルギーを得ることができ、衝撃緩衝装置用に適しています。また、コイルバネと異なり、荷重特性は非線形、すなわちフックの法則は成り立ちません。ある荷重までは線形性が保たれるのですが、大きな荷重がかかると変位量は小さくなっていきます。ロードバイクのクイックリリースに使われているのもたけのこばねに分類されることが多いようですね。個人的にはアメリカM4中戦車「シャーマン」の一部にサスペンションとして採用されているのが興味深いです。このばねの特性上底付き(目一杯縮み切ってこれ以上縮めない状態)しにくく限界付近で粘れるばねだったので採用されたということなのでしょうかね。
皿ばね
板バネの一種。変位が非常に小さいものの、その割に大荷重を支持できます。板厚や形状により様々な特性を出すことができますし、非常に狭い隙間でも設置可能なため、設置場所が限られる場合も有効です。なお、変位量を増やすためにスリットを付けたものがあり、こちらはMT車のクラッチ等で使用されています。
渦巻きばね
板バネの一種。時計に詳しい方ならなじみ深い渦巻きばね。ぜんまいが最も有名ですね。こちらも板バネの一種ということで基本的に曲げ荷重のみを受け持っていると考えることができます。欧州では15世紀には動力として用いられているようですが、冶金技術の乏しい時代では大きなエネルギーをため込むことはできなかったようです。日本でもからくりの動力として古くから用いられていますが、こちらの材料は金属ではなくなんとクジラのひげ。特別な熱処理も必要なく、簡単に入手できるので当時としては非常に優れたゼンマイ材料だったと言えるのではないでしょうか。なお、機械式時計の動力として使おうとするとフックの法則は欠点になるんですね。なぜならゼンマイがほどければほどけるほど発生するトルクは小さくなる、つまり動かすために必要な力を十分に得られなくなってしまうのです。また、逆に巻き上げすぎるとトルクが強力で破損の原因となることもあります。これを解消する方法は主に2種類。変速機を使用するか、ばねそのものに工夫を施すかです。ここら辺は時計についての回で取り上げたいですね。
機械式時計にはもう一つ渦巻きばねが入っており、それはテンプに使われています。これは往復運動を行う渦巻きばねで通常1方向しか担うことないばねとしては少々珍しい用途になります。
変わり種として定荷重ばねというものがあります(図3)。一見ただのゼンマイですが図4のように反対方向に曲げて使用することで変位量に関係なく一定荷重をかけることができます。
ということで今回はコイルバネ以外のばねについてでした。次回は空気ばねをはじめとするちょっと変わったばねについてです。お楽しみに。
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