2.2 ダンパ-1

基礎部品

 今回はダンパですね。今までは長ったらしくやっていましたがダンパは基本が分かれば問題ないので2回だけで終わらせます。

 さて、ダンパ全体に共通して言えることがあります。それは、運動エネルギーを別の不可逆性のエネルギーに変換して外界に逃がしているということです。ばねに関しても一見これを満たしているかのように見えますが弾性エネルギーは可逆性なのでこれを満たさないということですね。

 現在用いられている主なダンパは2種類に大別できます。流体の粘性を利用したものか、塑性変形を利用したものか。

流体タイプ

 まずは流体(特に液体)を利用したタイプのお話から。作動流体は主に油なのでここからは油前提での話になります。まず、流体には粘性というものがあります。水を別の容器に移し替えるときと油を移し替えたときを比べると同じ液体であるにもかかわらず、油の方が時間がかかりますよね。「油を売る」と言われるくらいですし。これが粘性です。そしてその粘り気を利用して余計な振動を抑制するのが流体タイプのダンパです。構造は以下の図の通り。

ダッシュポット

 ピストンには小さな穴が開いており、ピストンが移動するとこの穴の中を油が移動します。この時、粘性によりピストンには抵抗力がかかります。そしてこの抵抗力は式(1)のように速度に比例したものとしてあらわすことができます。

(1) \(F=-c\vec{x}=-c\dot{x}\)

ここで太字のxに点がついてるやつ何?となるかもしれませんがこれは速度ベクトルです。細かいことは番外編で扱います。cは定数、Fは抵抗力です。早い話が速度に比例して抵抗力は大きくなります。

 ここまでで摩擦でも熱エネルギーに変換してるんだし摩擦でいいんじゃないの?と思った方、鋭いですね。摩擦の欠点は「垂直応力が一定なら摩擦力の大きさは速度によらず一定(動摩擦力)」という点と、機械的な限界が挙げられます。要するに速度が増えても摩擦力は増えないので制振装置としてはイマイチなんですよね。また、摩擦を発生させているということは言い換えれば摩耗を発生させているということであり、その点でも制約が増えます。そのため摩耗が少なく構造が単純で効果も大きい流体を使用するダンパは普及しているわけです。

 さて、ここまではあくまでも抽象化したダンパ、というかダッシュポットについてです。実際はピストンもシリンダーももう少し複雑な構造をしていますが、そこらへんはまた次回。

 余談ですが摩擦をダンパとして使用する例は全くないわけではなく、一部で実用例があります。例えば東京ゲートブリッジの支承。数種の免震支承が導入されているのですが、その中ですべり型免震支承は表面にテフロン加工を施した金属板を重ね合わせて摺動させるだけという簡易な構造でありながら大荷重を支持可能で、摩擦力による減衰性を併せ持つ優れた支承です。

 

塑性変形タイプ 

 次に塑性変形タイプですが、こちらは主な実用例はただ一つ。免震構造です。金属の塑性変形には非常に大きなエネルギーを活用しているということです。このタイプの良いところは形状は比較的自由ということです。積層ゴムの中心部に円筒状に備え付けられたものや以前も少しだけ触れたU字鋼材など要求に応じて様々な構造が採用されています。

 

 ということでダンパ基礎は終わり。余談ですが自動車をはじめとして一部業界ではダンパではなく、ショックアブソーバ、すなわち衝撃吸収装置と言われていますがダンパに含まれるものなので書籍や別のサイトを読んでいる際にこの言葉が出てきても「ああ、はいはいダンパのことね」とスルーしておいてください。それでは次々回からはついにサスペンション!移動機械、モビリティには欠かせないこの装置に関して紹介していきます。それではお楽しみに。Bye

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