2.4 開口部-1 概要&扉

基礎部品

2.4 開口部-1-1 概要

 今回から開口部についてです。開口部は文字通り壁面に開けた穴のことです。構造上の弱点となり、強度や剛性を考えた際には極力なくしたいものになります。しかし、機能的にどうしても必要な開口部というのは山のようにありますし、ユーザーからの注文も非常に多いものになってきます。そんな開口部について今後見ていきましょう。

 まずは具体例について。主な開口部は収納、窓、扉(ハッチ)、口(給油、換気など)、です。収納は可動部をしまい込むもの、扉は貨客の積み下ろしや他の開口部の保護に使用されるもの、窓は可視光線が透過可能でかつ構造材ではないもの、口は機械や乗員にとって必要な物質が出入りする比較的小径の開口部とします。

 周辺構造については共通する事柄としては開口部付近の肉厚を上げヒンジ部についてはより強力にするというものが共通する構造になります。

 必要に応じて雨どいや水抜き用の設備、密閉構造、ガイドを併せ持ちます。

 窓については次回以降詳しく解説していこうと思います。

 

2.4 開口部-1-2 扉

 これで終わると短いのでの概要も触れていきましょう。「扉なんてそんなもの」と思われた方、甘い。人工甘味料の100倍甘いです。とはいえ建築の扉はあまり詳しくないので少しだけ触れるのにとどめ、主に移動機械(モビリティ)、乗り物について解説していきます。

 扉は主に2種類に大別できます。引き戸とヒンジ付きドアです。

 

引き戸

 まずは引き戸。襖や障子というとわかりやすいかもしれません。特徴は何と言っても占有箇所が二次元であること、大きな開口部を容易に作ることができることです。実際引き戸が使われている個所は鉄道車両、特に通勤列車で、大きな開口部でありながら非常に省スペースでの開閉を可能にしています。

 

ヒンジドア

 次にヒンジドア。引き戸と異なり使用には三次元的な空間が必要です。しかし戸袋等を必要とせず、密閉性が高いという特徴があります。ヒンジ(蝶番)は非常に重要で便利なものの弱点でもあるため用途に合わせたしっかりとした設計が求められます。

 

回転ドア

 最後に建築物だけで用いられている回転ドアについて。これは説明することが少ないのでここで説明しきります。北欧でよく用いられるほか、日本やアメリカでも高層ビルによく用いられていた扉で、扉が羽根車のようになっています。この扉のメリット

気密性の高さ

気圧差によるトルク変動の少なさ

この2つです。通常の引き戸と異なり常に外界と内部を遮断しているので気密性や気温の保持には優れています。そのため東京ドームや高層ビル(注1)のように気圧の保持が必要な施設や内部の気温変動を押さえたい場合によく用いられています。気圧差による開けやすさはパスカルの定理(下図)から明らかです。

左右にかかるモーメントはいつでも同じなので、扉を開くのに必要なのは扉の摩擦力と慣性力

 しかし唯一にして最大のデメリットが危険であるということです。手動扉の場合でも動かすにはある程度力が必要ですが少ない力で回そうと外側を持つと手を挟みやすいですし、自動扉の場合は適切なセンサや監視体制を設けないと所持品や体を巻き込むことで事故につながります。日本国内でも軽度の事故だけでなく死亡事故まで発生しており、国内の回転扉はほぼ全滅し引き戸に置き換えられています。

 私自身国内では見たことがなく、シカゴで体験したのが最初で最後ですね。子供(?)ながらにあれは結構怖いと思いました。

 (2024/07/04追記)

と、思いきやなんと国内にもまだ残っているし、何なら変わり種もあるとのことです。茨城県の鹿島セントラルホテルには楕円型の回転ドアがあると…これはおそらく空調面でのメリットがあると判断されたのでしょう。常に2重窓と同様の構造を実現しながら、空気の吸排気も十分制限されているためですね。いやー面白いものがまだまだ残っているものですね。

ということで次回は引き戸についての深掘りです。お楽しみに。

 

注1

 高層ビルにおいて気圧の問題が出るの?と思われるかもしれませんが出るんです。しかし、地上と高層階の標高差によるものは関係ありません。問題となるのは煙突効果。煙突のような筒の中で暖かい空気があると上昇しますがそれにより下層階の気圧が低下し、下部の開口部より外気が入ってくるというものです。超高層ビルではこの効果により、出入り口では非常に強い風が発生すると予想されたために気密性の高い扉を導入していたのです。詳細はまたいつか扱います。なお、現在では国内の多くのビルで二重の引き戸タイプの自動ドアが導入されています。こちらでも問題ないと判断されたのと、防火の観点からも煙突効果への対策がビル全体で取られた結果です。

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